空を制する ― 戦闘機にウェイトを置くアジア太平洋地域の防衛費

地政学的状況の変化に動かされ、アジア太平洋地域の国々では、最先端の航空優勢能力を備えた戦闘機の取得が最優先事項として浮上してきました。

今後10年間で大きく発展するだろう戦闘機プロジェクトの検討が、数カ国において進められています。

対立関係にある国が能力を向上させていることが主因となり、アジア太平洋地域の国々は経年した飛行隊(戦闘機)の改修を急かされている、とシェパード社で航空分野の上級アナリストを務めるウルケル・アクタショール氏は言います。

シェパード社の「Defence Insight(防衛に関する考察)」によると、新型航空機への支出は2024年にピークを迎えて約1兆6千億円(150億ドル)を上回り、その後、複数の主要なプログラムが完結するにつれ、2020年代後半にかけて次第に減少するとされています。

この地域では、インド、日本、韓国の3カ国の防衛費が上位を占めることが予測されています。

「防衛に関する考察」の予測では、インドがアジア太平洋地域の市場で最も顕著な動きを取るとされており、戦闘機383機と軽攻撃機/練習機278機の所要が見込まれています。

インドだけで、この地域の需要の3分の1以上を占めることになるでしょう。

インド政府は、先進中型戦闘機(AMCA)、多用途戦闘機(MRCA)のほか、F-15やF/A-18といったソリューション等、幅広い範囲のプロジェクトに力を注いでいます。

また、「防衛に関する考察」によると、日本の防衛費はこの地域で第2位の規模になると予測されています。日本政府は2030年以降、F-2飛行隊の後継として、第6世代航空優勢ステルス戦闘機F-X(別称:F-3)の計画を立てています。

このプログラムには約5兆1千億円(470億ドル)弱の支出が見込まれており、全F-2飛行隊を代替するにあたり、航空自衛隊は100機近くのF-Xを要するでしょう。

また、日本政府は、2023年以降にF-15(非近代化機)99機の代替を予定しています。それに併せてF-35を105機購入する計画も進めているため、最終的には合計147機のF-35が配備されることになり、日本はF-35の最大の輸出先となるでしょう。

さらに、F-15JSIプロジェクトが進められており、現在搭載しているAN/APG-63レーダーシステムは、最新式のAPG-82 AESAレーダーシステムのベースラインに代替される見込みです。これらはレイセオン・インテリジェンス&スペース(RI&S)のレーダーであり、同社は航空機メーカーのボーイング社と緊密に連携しています。

多くの欧米の企業にとって、日本は航空優勢の領域では特別関心を引く国です。

「日本のお客様は、地域における脅威の発展から次世代テクノロジーの開発まで、常に新たな課題に直面しています。RI&Sは、それらの分野でぜひお役に立ちたいと考えています」と、RI&SのF-15プログラム担当副社長ミシェル・ステチェンスキーは述べています。

「RI&Sは米国の同盟国に包括的なソリューションを提供していますが、中でも日本は、特に航空分野において軍事的優位性を維持する必要があり、安全保障上の新たな課題の数々に直面しているところです」

ステチェンスキーは、日本とのプロジェクトを地域の安全保障環境という文脈で捉えています。「例えば識別不明機が日本の領空を脅かした場合、RI&Sの火器管制レーダー、敵味方識別装置(IFF)、ナビゲーションシステム、及び空対空ミサイル等を搭載した日本の戦闘機が緊急発進し、領空侵犯の恐れのある航空機の位置を特定、識別し、警告措置等を実施します」

「日本は長年、米国以外では最大のF-15飛行隊を運用しており、次期F-15JSIプログラムでは、これらの航空機の能力向上を続けることを目標にしています」

「F-15に加えて、日本は2009年にF-35の調達を開始しました。次期戦闘機の開発にも取り組んでおり、無人機を真に必要としています。まさにこうしたF-15や将来調達する航空機(戦闘機)、あるいは今後開発する機が最高品質のレーダー、センサー、EW技術を確実に装備するためにも、日本とRI&Sのパートナーシップは大変重要です」

日本は「平成31年度以降に係る防衛計画の大綱」において、宇宙・サイバー・EWが国家安全保障上の優先事項であると明言していますが、これらの3領域はRI&Sが重点的に取り組んできた能力である、とステチェンスキーは言及しています。

この地域で第3位の規模となる防衛費を支出する韓国は、インドネシアとのKF-X戦闘機共同開発、F-15Kの近代化、F-35JSFの配備計画などに取り組んでいます。他にも、TA-50ブロックIIを戦闘機パイロット育成のための練習機として発注しました。

上位3か国以外にも、アジア太平洋地域には、急速に発展している航空優勢の市場が幅広くあります。インドネシアは紛れもなく重要な市場であり、オーストラリアもそれに並びます。

RI&Sの航空優勢技術は、次世代中帯域電波妨害装置(NGJ-MB)、レーダー警戒装置、火器管制レーダーを含めて、この地域の至るところで任務にあたっていると言います。

レイセオン・テクノロジーズはここ数十年間で、オーストラリアにおいて大幅な成長を遂げており、現在では1500人の社員がさまざまな防衛ニーズへの対処に注力しています。

「RI&Sは、レイセオン・テクノロジーズの製品が持つ高い能力、拡張性、実力を総合的に活用して、お客様の任務達成の手助けをし、それぞれの国の産業界と連携すると同時に、防衛上及び安全保障上の所要を満たすことができるよう支援します」とステチェンスキーは説明しています。

「例えばオーストラリアでは、1999年に現地法人レイセオンオーストラリアを設立しましたが、今ではオーストラリア国防軍に能力を提供する国内有数の企業に成長し、卓越した労働力の養成とオーストラリアの包括的な能力の開発に尽くしています。700人のエンジニアと専門家を含めて1500人の社員を有するレイセオンオーストラリアのチームの働きによって、RI&Sは、戦場統合システム、ミッションシステム、水上システム、水中システム、その他の武器等、多様なプログラムを納品することが可能となっています」

ほかにも、ステチェンスキーは、シンガポールがアジア太平洋地域の航空優勢事業で重要な位置にあると強調しました。

「シンガポールはこの地域における長年のパートナーであり、RI&Sの最高技術のいくつかは、シンガポールを最先端の地としてきました。長年にわたる連携から、RI&Sはシンガポール独自の安全保障上の所要を満たすための包括的なソリューションを提供してきました。レーダーからEW機器、センサーに至るRI&Sのさまざまなオープンアーキテクチャー技術によって航空優勢を提供し、いかなる場合でも安全で成功率の高い、実効的なミッションを確実にします。シンガポール共和国空軍が新しい技術を追求し続ける限り、RI&Sは航空分野における競争力の優位性を維持する次世代のソリューションを提供する用意があります」

「アジア太平洋地域やその他の地域の国々において、今後数年間、2つの重要な動向が航空優勢の進化を推し進めることになるでしょう」とステチェンスキーはさらに述べています。

まずは、「プラットフォームを問わず利用可能な先進的技術、そして、改修の遅延や混乱を最小限に抑える新たな方法による技術開発」が必要です。

次に強調したのは、レーダー、センサー、EWソリューションのような統合能力に対するニーズの拡大です。例としては、APG-82(v)1のようなAESAレーダー、レーダー警戒装置、NGJ-MB等が挙げられます。

このような技術は、「航空機と航空機乗組員を徹底的に支援することによって、抗堪性および任務遂行率を向上させること」を目的としています。

「RI&Sの任務遂行能力一式は既存の技術に統合することができ、装備品の持続性を高めることが可能です」